お知らせ

9月20日、ひょうごEXPO week「災害からの創造的復興」シンクロイベントとして、「減災復興学フォーラム」を開催いたしました

2025/09/20

阪神・淡路大震災の経験から、兵庫県立大学は創造的な復興と減災に関わる教育研究活動に取り組み、数多くの成果を生み出してきました。その取組を振り返ることで、「復興」と「減災」を両立させる重要性を再認識し、未来に向けた「減災復興」を考えるため、2025年9月20日(土)13:30~16:00、「減災復興学フォーラム ひょうごから広げる創造的復興と減災のメッセージ:阪神・淡路大震災30年を超えて」を開催いたしました。なお、本フォーラムは、ひょうごEXPO week「災害からの創造的復興」シンクロイベントとして認定されています。
フォーラムでは、まず、以下の4名の講師から、兵庫県内でそれぞれが取り組んでいる防災教育や実践についての報告がありました。

「減災復興学フォーラム」を開催いたしました

■報告①:防災ユニット・副専攻における防災教育の歩み

兵庫県立大学大学院減災復興政策研究科教授
学際リーダー教育センター・防災リーダー教育部門 副部門長 浦川豪
浦川先生からは、2011年に兵庫県立大学が防災教育センターを設立した経緯や、そこからの防災教育の歩みについて報告がありました。「人間力」というキーワードを設けたことや、学生との防災教育でのディベート大会への参加、あまおだ減災フェス等の地域防災活動、相馬市「農馬土カフェ」などのボランティア活動などの取組、体制の変化への対応など、今の学生や教職員にとってこれまでの歩みを振り返る貴重な機会となりました。

減災復興学フォーラム

■報告②:減災復興政策研究科における防災教育と研究

兵庫県立大学大学院減災復興政策研究科長・教授 永野康行
永野先生からは、2017年に減災復興政策研究科が設立され、そこから現在までに至る教育、研究、社会活動の取組について報告がありました。減災復興政策研究科は、全国でも珍しい防災分野に特化した大学院として設置申請を行い、「減災復興学」という新たな学問分野を拓くため、海外の防災機関や明石高専・長田高校などの研究教育交流の推進、紀要「減災復興学研究」の発行など、新たな挑戦内容について説明がありました。

減災復興学フォーラム

■報告③:大学・大学院での学びと実践活動

宝塚市都市安全部総合防災課/本研究科修了生 村尾佳苗
村尾様は、兵庫県立大学の副専攻「防災リーダー教育プログラム」に所属し、学生復興支援団体LANのメンバーでもありました。学部卒業後、大学院減災復興政策研究科博士前期課程を修了し、現在は宝塚市の防災担当職員として、兵庫県立大で学んだ知識を実践されています。
学部時代、被災地(南相馬市)を訪問して受けた衝撃、様々なフィールドワークや授業を通して学んだ現場を見る大切さ、コロナ禍で苦労した大学院での学びの経験、幅広い大学院生の仲間との交流などについて報告されました。また、宝塚市総合防災課で、様々な計画策定や防災訓練などの業務に携わり、市民や庁内の方と話し合いながら、粘り強くコツコツと取り組む大切さについてもお話がありました。

減災復興学フォーラム

■報告④:兵庫県立長田高校における探究活動と防災の取組

兵庫県立長田高校教諭 吉井謙太郎
吉井先生は、兵庫県立長田高等学校で防災学習の担当であり、また兵庫県震災・学校支援チーム(EARTH)のメンバーとしても活動をされています。長田高校は、生徒主体の活動に力を入れており、吉井先生や国際交流や探求活動に取り組まれており、学習指導要領における探求の位置づけ、課題や仮説の設定・研究計画への指導助言の難しさへの気付き、高校における防災教育の取組・地域連携の難しさなどについて説明がありました。そして、SSH(スーパーサイエンスハイスクール)の指定を受け、台湾での海外研修を企画する中で、兵庫県立大の減災復興政策研究科とのつながりが生まれ、学術交流協定や「高校生のための減災復興学フォーラム」の開催、「減災復興学研究」への論文の投稿などに取り組まれていることが報告されました。

減災復興学フォーラム

■パネルディスカッション:「防災教育の役割と、未来への減災復興のメッセージ」

パネリスト:講師4名(浦川豪・永野康行・村尾佳苗・吉井謙太郎)
コーディネーター 兵庫県立大学大学院減災復興政策研究科教授 青田良介

4名の講師からの報告後、これらの報告内容をふまえながら、「復興」と「減災」を両立させる重要性を再認識し、未来に向けた「減災復興」の概念を広く発信するためのパネルディスカッションを開催いたしました。
本フォーラムが、ひょうごEXPO week「災害からの創造的復興」シンクロイベントに認定されていることもあり、パネルディスカッションでは、2025年大阪・関西万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」や「いのち」に関連した8つの事業にも言及しながら、いのちの大切さや、「減災」と「復興」を一体で考える重要性、幅広い世代への防災教育や教訓・経験の伝承の大切さ、阪神・淡路大震災を経験した兵庫県ならではの防災の裾野の広がりなど、幅広い話題について活発に議論が行われました。
また会場からは、「事前に備えていても、いざ災害時には現場が上手く対応できない」という質問が寄せられ、それに対して、「組織の中での信頼関係の構築や、きちんとやり方を考え、多くの人で検証することが大切」という議論がなされました。
最後にコーディネーターの青田先生から、議論の総括として「分からないからこそ探究する」、「理論と実践の正のスパイラルを発展させる」、「狭い意味での防災でなく、人間力を高める」、「互いの多様性を認め、減災復興を切り口に様々な形でいのちに関わっていく」ことの重要性が述べられました。

減災復興フォーラム

・「何もできないという現実」に気付くと、「何かできる人になりたい」という思いが生まれ、「仲間と力を合わせる」大切さが分かる。
・自分が望む未来像を描けるイマジネーションの力が求められている。

減災復興フォーラム

・一人では出来なくても、みんなの「できる」を積み重ね、力を引き出すサポートをするのが私の仕事。
・学生は、じっくり論文を読んだり、その場で立ち止まって考えることも大切である。

減災復興フォーラム

・過去に経験していない災害に備えるためには、新しい学問領域としての研究やシミュレーションが役立つ。
・研究結果を現場に役立てていくため、いろいろな人との協業が必要。

減災復興フォーラム

・答えのない問いに取り組んで、社会のために還元していく力を、探究活動を通じて高校生に身に着けてほしい
・探究活動だけでなく、あらゆる活動を通して、人と意見を交わしながら、自分の中に何があるのか、何ができるのか考えてほしい。

減災復興フォーラム

・様々な意見をまとめると、「分からないことを探究する」、「理論と実践の正のスパイラルを発展させる」、「狭い意味での防災でなく、人間力を高める」、「一人ひとりが互いの多様性を認め、減災復興を切り口に、いろいろな形でいのちに関わっていく」ということになる。
・防災の教育や研究を通して、減災の総合化と政策の現場化に取り組んでいきたい。

4名からのご報告とパネルディスカッションは、阪神・淡路大震災の被災地である兵庫で防災教育の取り組む意義や、防災教育を通した人間育成や安全な社会づくりの重要性について、改めて考える良い機会となりました。4名のご報告者(浦川先生、永野先生、村尾様、吉井先生)、コーディネーターの青田先生、そして参加者の皆様に、心より感謝申し上げます。

減災復興フォーラム

(記録:紅谷昇平)

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